第7回の3C分析をした中で、パラレルワーカーの最大の弱みの一つは開発する体制を持たないことであり、逆にこの弱味を克服することができれば、雇われずに自由に収入をえるための大きな第1歩を踏み出すことができます。
あたり前の内容に見えますが、はじめて独立したり、パラレルワーカーを始める際に1人で立ち上がろうとする人が多いのと、1人で働くことによるリスクを抱え、悩んでいる人を見かけることがよくあります。
逆に生き生きと働いている人は、人とのつながりをとても大事にしている印象を受けます。
1人で働くリスク
私が考える、1人で働くことのリスクは、下記のとおりです。
- 1つの案件のすべてを開発・保守することができにくい
- そのため、元請け、1次下請け、2次下請け構造の下位層の仕事や
- 下位層にいくほと、仕事の中身は細分化、単純化、肉体労働化し
- 長時間労働、低単価競争
- 結果的に、自由でない、新3K的な働き方
- 次の仕事につながらない、仕事が続かない
になる確率が増すと考えています。
リスク発生の仕組み
では、上記のようなリスクや構造がなぜ生まれてしまうのかを考えてみます。
私は、市街地再開発事業などで新しく商業施設がたつ際に、施主から施設全体の指定メーカーにしてもらうための設備の営業をしていたことがあるのですが、IT業界に転職した際に最初に発見した建設業界との類似点は、「元請け」「下請け」「設計」ということばでした。
最新の動きはわかりませんが、当時は市街地再開発事業などの発注者と工事会社の指揮系統は下記のようなケースがほとんどでした。
1、施主(発注者) 例.三菱地所、三井不動産、住友不動産、森ビル
↓
2、設計 例.日建設計、日本設計
↓
3、施工 ゼネコン(注) 例.鹿島建設、大成建設、大林建設、竹中工務店、清水建設・・
↓
4、設備会社 例.大手電機設備会社、大手空調設備会社、大手水設備会社
↓
5、各設備業界を専門とするメーカーなど
↓
6、メーカーの設備を施工する工務店、職人
(注)ゼネコンとは、元来英語の「General Contractor」の略称であり、元請負者として各種の土木・建築工事を一式で発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者を指す。 日本語では総合建設業(そうごうけんせつぎょう)に該当する
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%8D%E3%82%B3%E3%83%B3
見積もりの流れは下位層の6→5→4→3→2→1(施主)ですので、5や6の工事会社の見積もりからすると、最終的にはおそらく2~3倍の金額で1の施主に納品されていたと思います。
搾取構造になる理由
差別化するところのない、コモディティ化した設備は、定価の半値八掛2割引きということばがあるくらい、低価格で納められていました。
1の施主に1億円でひきわたされるものが、5や6の段階では半値(5,000万円)の八掛け(4,000万円)の2割引きの3,600万円で納品されていることがめずらしくなかったということです。
同じようなことは、IT業界でも、官庁案件や、大型案件などで、依然としてこの構造がのこっているようです。
私には、大手のITベンダーが、ITゼネコンに見えることもあります。
いずれも、階層的なピラミッド構造になっています。
搾取構造を改善するには?
では、何故、施主は、直接、6の工事会社に直接で発注できないのでしょうか?
建築とITシステムの共通している点は、
- 複雑な相互依存関係にあるモジュールが、
- 幾重にも結合しながら、完成品として納められ、
- 長期間、利用しつづけられる必要がある点です。
その長期間利用されている間に、何か問題があった際の、品質や保守の観点から、復旧や対策をすぐにうつことができる必要があります。
そのためには、全体が見えている人、設計図から問題になっている箇所をよみとけて、これらの依存関係を、全て正しく把握できる手段を持っている人やチームである必要があります。
人体解剖図が体系化されて頭に入っている医師や、各専門分野の医師を抱えている総合病院なども同じ構造をもっているかもしれません。
総合的に品質を担保する仕組みが必要
つまり、施主が中途半端に、5や6の設備を直接発注してしまうと、何か問題が起きた際に、自分自身で対策する必要が発生するため、ゼネコンなどの総合的に品質を担保してくれる存在が必要になるのです。
ITエンジニアのパラレルワーカーが、多彩なスキルをもつ人達と共にチームで体制を組むことができれれば、下位層の仕事ではなく、より完成品に近い上位層の仕事にたずさわることができます。
また、施主からすると、このような人やチームに依頼することで、自身が消耗することなく、問題なくプロジェクトが完了すれば、次の仕事も慣れ親しんだ、同じ人やチームに任せたくなるのが常ですので、次回から新規に営業するコストがかかりません。
さらに、より施主(顧客)に近い距離にいるということは、生の顧客のニーズや、競合が解決できていないことに直接触れることができますので、将来のビジネス機会をいち早く発見することにも役立ちます。
第8回、いかがだったでしょうか。チームで稼ぐか、1人で稼ぐか。この違いを営業的な視点で考えみました。
次回は、米国で、2011年頃から研究が始まっている、企業ではなく、プロジェクト単位で、ITエンジニアが集まり、開発が進行していくフラッシュチームや組織を紹介してみたいと思います。
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