前回「顧客を獲得する工程」を経るうちに、生き残る顧客の割合(「率」)がどんどん減っていくということについて書きました。
第10回は、こころみに、本日 2020/2/24 現在、日本全国で大きな騒動になっており、皆さんも関心の高い、新型コロナウィルスの感染率や死亡率などの数字を使って、さまざまな数字の切取り方、視点を変えることによって、同じ「率」が形を変えてさまざまに解釈できることについて考えてみたいと思います。
営業やマーケティングの世界で「率」と名の付くものですが、受注率、失注率、離反率、リピート率、定着率、アクティブ率、新規率、既存率、クリック率、コンバージョン率、離脱率、直帰率・・・、などさまざまあります。
この「率」というのは、サンプル数が多ければ多いほど、集計期間が長ければ長いほど、驚くほど変化しない、重要な信憑性の高い数値であることを体験的に感じている人は多いはずです。
「率」のみかた
今回は、我々の生存に影響する「死亡率」という数字を例に、この「率」のみかたを関あげていきたいと思います。
新型コロナウィルスの情勢
2020/2/23 現在の新型コロナウィルスの情勢ですが、
欧州疾病予防管理センター
中国国内の細かい情勢は下記から見ることができます。https://news.qq.com/zt2020/page/feiyan.htm
湖北省の人口を 6,000 万人、中国(湖北省以外)の人口 13 億、日本の人口 1.26 億とした場合、感染率(感染数 / 人口)、感染死亡率(死亡数 / 感染数)、死亡率(感染死亡数 / 人口)をみてみると、ざっと以下のような感じになります。
▼湖北省
- 感染率 0.107 %
- 936 人に 1 人(人口 936 人あたり、995 人は感染していない)
- 感染死亡率 3.6 %
- 27 人に 1 人(感染者 27 人のうち 26 人は生きている)
- 死亡率(人口) 0.0039 %
- 人口 25,575 人あたりに 1 人感染死
( もともと死亡する予定の人をのぞき 、25,575 人のうち、25,574 人は生きている)
▼中国(湖北省以外)
- 感染率 0.001 %
- 100,378 人に 1 人(人口 100,378 人あたり、100,377 人は感染していない)
- 感染死亡率 0.86%
- 116 人に 1 人(感染者 116 人のうち 115 人は生きている)
- 死亡率(人口) 0.000000086%
- 人口 1,160 万人あたりに 1 人感染死
(もともと死亡する予定の人をのぞき、1,160 万人のうち、1 人以外全員生きている)
▼日本国内
- 感染率 0.001 %
- 約 100 万人に 1 人(人口 100 万人当たり、99 万 9999 人は感染していない)
- 感染死亡率 0.76%
- 132 人に 1 人(感染者 132 人のうち 131 人は生きている)
- 死亡率(人口) ほぼ0。
- 人口 1.26 億人あたりに 1 人感染死
( もともと死亡する予定の人をのぞき 、1.26 億人のうち、1 人以外全員生きている)
中国(湖北省以外) と日本の 感染死亡率 が結構ちかく 0.86 %と 0.76 %。
死亡率(人口)をみると、本日現在、実際感じている感覚より相当少ないという印象を持たれる方がほとんどではないでしょうか。
ちなみに、中国の
年間出生数が 1500 万人程度で、
人口増が 500 万人程度といわれていますので、おそらく自然死を含めた
死亡数は、1,000 万人程度と推計できます。
その場合、中国全土で
- 「毎月」83 万人程度がなくなっており、
この1か月で、
- 湖北省で 2,346 人、
- 中国(湖北省以外)で 112 人
死んだと考えると
通常の死亡数を分母とした「この1か月」の感染死が占める全死亡数に対する割合である死因率は、人口比で、およそ
▼湖北省
- 死亡者数 6.4 % 15.6 人あたり、1 人が感染死。
(15 人のうち、14 人は別の原因で死亡)
▼中国(湖北省以外)
- 死亡者数 0.013 % 7,440 人あたり、1人が感染死
(7,440 人のうち、7,439 人は別の原因で死亡)
という見方ができることになります。
今月の、湖北省の死因の 6.4 %(15.6 人に 1 人)だとすると、この数字は、なかなかのインパクトですが、高齢者の感染死亡率が特に高いという報道から見ると、妥当な数字のようにも見えます。
インフルエンザとの比較
厚生労働省の人口動態統計によると
2018 年に日本国内でインフルエンザで亡くなった人は 3,325 人。
本日現在の新型コロナウィルスによる日本国内での死亡数は 1 人です。
よって、新型コロナウィルス死亡数が 3325 倍に増えたとして (それにとまなう感染者数は 132 人→ 43.8 万人) 、2018 年のインフルエンザと同じくらいの影響ということになります。
マスクはそこまで必要なのか?
現在、日本では、マスクが品薄になったり、東京オリンピックやコンサートの中止騒ぎなどが話題になっていますが「数字だけを見る」と、近い将来、新型コロナウィルスによる、マスコミの報道量や、それに反応する社会心理とそれによる経済への影響などのレポートが出てくるような、歴史的な事例になるのかもしれません。
参考までに、
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング (著), オーラ・ロスリング (著)
の10の思い込みの中の一つに、我々が、ついつい恐ろしいものには自然に目がいってしまう例として2016年 4000万機の旅客機が安全運航されており、死亡事故はわずか10機。
とあります。
もし、航空機事故にあおうとすると、1 年間に 400 万回搭乗しないと事故にあえない確率ということです。
我々が直観的に「感じる」リスクの量と、実際の数字でみた「率」との間に大きな隔たりがあるいい例です。
交通事故との比較
以下は、完全に余談ですが、
- 2019 年の日本の死亡数 137 万人
- インフルエンザ死亡数 3,325 人
- 交通事故死者数 3,215 人
- 交通事故件数 38万件
- 交通事故負傷者数 46万人
交通事故の負傷者数が仮に毎年同じで、事故が、一生に1回だけ起きると仮定した場合
46 万人 × 平均寿命 80 年 = 3,680 万人
人口 1.26 億人の約 30 %が、一生に一度、交通事故にあうということになります。よって、数字だけ見ると、交通事故で死亡する人数は毎年インフルエンザと同じくらい。
しかし、交通事故により負傷する率は、インフルエンザ死亡数の 138 倍もあり
新型コロナウイルスの死亡数の 46 万倍もあるということです。
結果、交通事故は相当気をつける必要がある高いリスクということになります。
第二次世界大戦との比較
参考までに、死亡率ということで、あの第二次世界大戦のときどうだったかといいますと
日本の軍人約 840 万人のうち、210 万人が戦死。
死亡率 25 %。4 人に 1 人が死亡。
戦傷者数は、死亡者数より相当多いことが想定されますので、ファクトフルネスの旅客機や、現在の新型コロナウイルスと同じ人間の感覚だとすると、戦争に行かれた人は感覚的に、ほぼ全員死を覚悟していた戦地に赴いていたといえるのかも知れません。
空襲や、原爆をふくめた民間人の死亡者が 50 万人 ~ 100 万人。軍人、民間人をあわせた人口における犠牲者の割合が 3.67 % ~ 4.37 %現在の日本の人口にあてはめると、500 万人程度。
ちなみに、歴史の教科書で習った記憶がなかったのですが、最大の犠牲者数はソビエト連邦が最大で、2660 万人。(全人口 1 億 9670 万の 13.5 %)
第10回は、我々が誤解しやすい、数字や「率」のさまざまな見方を考えてみました。
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