第2回につづき、複数の働き方(パラレルワーク)がなぜ必要になっているのか
- 技術が変化する速度
- 個人のスキルと企業の循環
- 定年というゴールが先に延び続ける時代
の視点から考えてみたいと思います。
ソフトウェアがあらゆる産業を” Is Eating”
元ネットスケープの創業者のマーク・アンドリーセンが2011年8月のウォールストリート・ジャーナルで
”Why Software Is Eating The World”
というコラムを寄稿しました。
その中でソフトウェアがあらゆる産業を” Is Eating”(食べている→クジラが餌を丸のみしている→代替)していくことについて予言しています。
おどろくのは、すでにこの時点で 人間の目や脳で瞬間的に判断している様々な処理を、AIが代替できることにより、自動運転の時代を予言していたことです。
ちなみに、第2回でふれた、トヨタ自動車の豊田章夫社長が
「電動化」「自動化」「コネクティッド」「シェアリング」などの技術革新は急速に進み、新しい競争ルールで、新しいライバルたちと、「勝つか負けるか」ではなく、「生きるか死ぬか」の闘いが始まっています。
日本は米国から7年遅れ
このメッセージを残したのは、繰り返しになりますが、2018年10月。
マーク・アンドリーセンは、2011年8月。
その差、7年。
この米国と日本の間に存在した7年という時間の差と、実際にこの7年間という時間で自動運転の実用化が現実化しつつあることをどうとらえるか。
幾重にも進化する技術が、驚くようなサービスを生みだしていく。
Uberは、スマホ、アプリ、GPS、GoogleMAPのような技術の進化を見事にとらえました。
視点を変えて、皆さんがこのページを読んでいるまさに「今」世界で起きていることが、今から7年後、いやおそらく今後はもっと短い時間の間に、どの業界でも予測できない“ Is Eating“を起きこしうる(起こし続けている)ということです。
過去にソフトウェアが“ Is Eating“してきた事例
過去にソフトウェアが“ Is Eating“してきた事例を見ていきます。
- ECが、店舗を、 “ Is Eating“
- Amazonが、書店を、 “ Is Eating“
- Kindleが、紙の出版物を、 “ Is Eating“
- インターネット広告が、テレビ・新聞広告を、 “ Is Eating“
- メールが、郵便物やファックスを、 “ Is Eating“
- メッセンジャーアプリが、メールや電話を、 “ Is Eating“
- スマホが、固定電話・音楽CD・写真・カメラを、 “ Is Eating“
- youtubeやNETFLIX・HULUが、テレビ・レンタルビデオを、 “ Is Eating“
- ビデオ会議は、出張や交通手段を、 “ Is Eating“
- 動画が、教育・研修・トレーニングを、 “ Is Eating“
- Uberのアプリが、タクシー会社を、 “ Is Eating“
- 民泊のAIR B&Bが既存の宿泊施設を、 “ Is Eating“
今後のソフトウェアが“ Is Eating“しそうな事例
今後はどうでしょうか。
- キャッシュレスが、ATMや販売員を・・・
- 無人店舗が、販売員を・・・
- AIが、医者を・・・
- ゲノム解析が、薬を・・・
- 自動運転が、運転手を・・・
- ソフトウェアが、倉庫スタッフを・・・
- GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)が、プログラマーやWEBデザイナーを・・・
- リモートワークが、通勤を・・・
あなたが今勤めている企業は、この流れについていけるように見えますか?
ソフトウェアが、企業を “ Is Eating“
このような、制御不能な変化の中で、企業とそこで働いている社員との関係も、否応なく変わっていかざるをえません。
企業は、個人に変化をもとめ、
個人は、企業に変化をもとめる。
この流れに、うまくのれない両者は、「企業」でも、「個人」でも、存在価値がなくなります。
ただ、少なくとも、企業まかせにする問題ともいえません。
居心地の良い会社は危険?
現実的ではないかもしれませんが、全ての個人が変化すれば、その個人を構成要素としている企業は変化します。
長く同じ企業にいる人の集まりは、居心地がいい反面、同じような経験しかしてないので、同じようなスキルの人が生成されます。よって、変化への対応には不向きです。
その企業の枠で変化できる仕事が存在しないのであれば、自ら外にでて変化する。
自立する・・・。
プロ野球選手が、シーズンを終え、中南米のウィンターリーグで武者修行(自主トレ)し、日本の球団に戻り、大活躍するケースがあります。
そのような個人⇔企業の循環があってもいいのかもしれません。
パラレルワークの重要性
過去に変化してこなかった環境のループに身をおくよりも新たな パラレルな働き方のスタイル。
IT業界でも、セカンドワークを持っている人を積極的に採用する企業もではじめています。
私は、今後ますます変化が速くなる時代、企業はその生き残りをかけて、このような流れが増えていくと考えています。
日本の定年制度について
2つ目の働き方がなぜ必要になっているのか?の最後に、
「少子高齢化時代、我われは、何歳まで働くことが求められるのでしょうか?」
そもそも、明治時代の定年は、平均寿命50歳に対して、定年が55歳でした。つまり、平均寿命より定年が先に設定されていたのです。
明治時代の50才から現在の80才まで30才も伸びているのに対し、定年の年齢は、55才から65才と10才しか伸びていません。
一方、最近の定年の伸び方です。
高年齢者雇用安定法は、
- 1985年に60才定年を努力義務。
- 1994年には法改正して 60才定年を義務化(1998年に施行)
- 2006年には法改正して65才までの継続雇用を義務化(2013年に施行)。
施行時期をみると、15年で定年が5歳延びています。
- 1998年 60歳
- 2013年 65歳・・・
平均寿命の延び率は今のところ大きく変化していませんので出生率がおちていることを除外しても・・、下記のように定年が伸びても誰もおどろかないでしょう。
- 2028年 70歳(2020年から8年後)
- 2043年 75歳(2020年から23年後)
海外では定年制度がないところもある
ちなみに、アメリカ合衆国やイギリス、オーストラリアなどにはそもそも定年制が存在しません。米国では、年齢による就業差別が連邦法により禁じられています。(軍人や警察官を除く)
危機感を持つことが大事
日本でも、深刻な人手不足の影響もあり、定年廃止の議論をみかけるようになりました。
しかし、現在私たちがもっている能力が、この激しい変化の時代、そんなに長く通用するのでしょうか?
皆さんがこの10年に求められたスキルの変化をおもうだけで、それはないと思うのではないでしょうか。
特に、そのスキルが先端であるべき IT エンジニアの皆さんはなおさらでしょう・・。
以上が、私が考えるパラレルワークが必要とされる理由です。
第2回、第3回で「パラレルワークをすべき4つの理由」について考えてきましたがいかがでしたしょうか?
皆さんとも是非一緒に考えてみたいとおもいます。
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