第6回では、自分の「時間」を何に使うか?について書きました。
第7回はそれをさらに深堀して、ITエンジニアの資産価値をスキルなどの技術的な視点だけではなく、マーケティング的な視点で、どうあげたらいいのかについて考えます。
優秀な人材の価値
ビル・ゲイツは、
”優秀なソフトウェア・プログラマーは平均的なプログラマーの10,000倍の価値がある”
と述べています。
私は、10,000倍の価値があると感じたプログラマーに出会えたことはありませんが、2~20倍くらいであればあります。
売上の数値で差が出る
この数字は、感覚的なものではありません。営業やマーケティングの常に売上などの数値を日々みている立場からも、優秀なエンジニアが開発・貢献した機能や品質から生み出される「収益」が、平均的なプログラマーの2~20倍を超えることに違和感を感じないということです。
Microsoft の場合は、Windows がデスクトップ PC の OS シェアの 86% を占めています。よって、開発にかかわった人数と利用者数の差を考えると、10,000倍の価値があるというプログラマーが存在することは、誇張された表現だとは思いません。
価値は提供する対象そのものの差で決まる
ただし、この10,000倍の価値があるプログラマーも、例えばあなたと同じソフトウェアを開発したときに、常に10,000倍の価値を生み出すことができるでしょうか?
平均的なプログラマーが1年間に1千万円の収益があげらている場合に、
優秀なプログラマーは、その10,000倍の1千億円をあげることができるのでしょうか?
つまり、ITエンジニアのスキルを「何に」投資し、「誰に」、「どうやって」提供するかが、どれだけ大きな差になるかということです。
そこから得られる ITエンジニア 一人当たりの価値や収益は、10倍、100倍、1000倍の差がつく可能性があるということです。
価値を高めるには?
限りある時間を、スキルアップに費やすべきという方も多いかと思います。
その前に少しだけ立ちどまって、自分の時間を何に使うと最も効率がいいかを正しく判断できたとしたら、身につけたスキルがより輝きを放つことになります。
思考のテンプレートで考える
それでは、ITエンジニアのスキルを具体的に「何に」投資するべきかを経営戦略やマーケティングで利用するフレームワーク(方向性を見つけ出すための思考のテンプレート)を使って考えみます。
一般的には「企業」で使われているものですが、これを「ITエンジニアのパラレルワーク」における成功要因を探る観点で実験的に使ってみます。
3C 分析で課題を明確化
3C分析とは、自社、競合、顧客をリサーチし、戦略を考えるフレームワークです。
下記の課題を明確にするために使ってみます。
- ITエンジニアのセカンドワークの市場(顧客ニーズ)がどこにありそうか?
- ITエンジニアの独自資源を使って、顧客ニーズにどうこたえることができるか?
- 競合は誰になりそうで、顧客があなたのセカンドワークに対価を支払う成功要因(課題)は何か?
Customer 分析(市場・顧客)
- 経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2020年には約30万人、2030年には約59万人ものIT技術者が不足すると予測されている。
- 大企業のシステムでは、団塊世代の大量退職などで、レガシーなシステムを保守できなくなっているとの問題も浮上。
- システム開発方式が、階層構造になっている案件では、開発者に十分な給与がまわっていない。
- 技術の進化により、世界的にもフリーランスや、副業をする人は増える傾向にある。米国では3,980万人がフリーランサー。
- 技術的には、スマホの普及が一段落し、AI、IOT、5G、さらに量子コンピュータなど、大量のデータをつかって何を行うかが企業側の競争戦略上の重要課題になっていく。
Competitor(競合)
- オフショア開発会社の日本進出。
- ASP、SaaS などの低単価クラウドサービスの台頭。
- フリーランサー。
Company(自社→今回はITエンジニアのセカンドワーカー)
- 企業と比べて、ブランド/信用がない。
- 企業と比べて、資金が乏しい。
- 企業と比べて、顧客基盤を開拓・維持する、営業やマーケティングが不在。
- 企業と比べて、多様なスキルや体制を必要とする、大規模なシステムの元請などは、パラレルワーカーには不向き。
- 企業と比べて、24時間365時間などの保守が必要となる仕事は不向き。
- 企業と比べて、開発する製品や、サービスに制約がない。(最先端の技術にチャレンジ可)
- 企業と比べて、企業内のリソースを使わなくてよい。(自身が開発しなくてもよい)
- 企業と比べて、価格競争力がある(間接経費が少ない)
- 企業と比べて、リスクをとれる。(ハイリスク、ハイリターンモデルも許容)
- 企業と比べて、すぐに実行に移せる
- ビデオ会議や音声会議などの普及も手伝い、ITエンジニアはいつでもどこでも仕事できる環境が急速に普及してきている。
ITエンジニアの資産価値を高めるには?
1、ITエンジニアのパラレルワークの市場(顧客ニーズ)がどこにありそうか?
例)
IT業界の人材不足が継続する中で、企業は既存でもっているシステムの改善・保守が思うように進まない中で、競合他社におくれをとらないための業務のデジタル化がますます求められてくる。
2、ITエンジニアの独自資源を使って、顧客ニーズにどうこたえることができるか?
例)
顧客ニーズ:今後激しく移り変わる技術変化の中で、競合他社に後れをとらないために重要だが、企業にとってはハイリスクな(やってみないとわからない)、研究開発的なデジタル化のコアな課題を、ITエンジニアのセカンドワークの時間を使って、スモールスタートし、競合他社に先んじて、その効果を実証できる。
3、競合は誰になりそうで、顧客があなたのパラレルワークに対価を支払う成功要因(課題)は何か?
例)
1)宣伝サイト(誰に、何を、どう売るか、経歴)をいち早く立上げ、1件目の実績をつくる。
人目につく場所にあなたの店(サイト)をださないことには、誰も振りむいてくれません。
理想としては、1件目の顧客を含め、全ての顧客からリピート利用してもらうことを目指しましょう。
2)ASPやSaaSがでてきにくい技術領域で、顧客(個人・法人)から見た特徴・独自性を含んだアピールポイントを決定。
理想としては、同じ技術領域に、時間を投下し続けることができれば競合に差をつけやすいです。
3)開発体制の構築(個人的なつながりやネットワーク、オフショア開発体制などを整備)
戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る
実行するための体制は常に手入れしておく。
第7回、いかがだったでしょうか?3C分析というフレームワークを使って、ITエンジニアの資産価値をどうあげるかを「実験的に」考えてみました。 皆さんも気軽な感じでいいと思いますので、どのようなことが導き出せるか、是非ためしてみて遊んでみてください。
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